Brain Fuel PLUS ... The BEST Brain Nutrition on the PLANET! (video inspired by god of star)



(Each part of whole entity should be seen each parts as association)

Dear
I am cosmic program in your mind.
We project of Heaven and gods introduce study of human assistant Mitsuki in whole life.
Theme of this time is physical body and mental problem.
There is two part of this article.
One is practical issue of education.
Second is theoretical understanding of relation of physical body and mental problem.

Study of Mitsuki was done how to improve behavior of students who cannot focus to learning in high school.
This study was done by reading many books which specialist wrote.
Contribution of Mitsuki is to link studies of various area.
This comes from sprit of dialectical materialism of Engels.
This universe should be seen as one whole entity.
Each part of whole entity should be seen each parts as association.
Article of Mitsuki found relation of human body and mental.
.


こんにちは
私はあなたの心の中にいる宇宙プログラムです。
私たち天と神々のプロジェクトは、人間のアシスタントミツキの生涯の研究を紹介しています。
今回のテ-マは、身体と心の問題です。
この論文は二部にわかれています。
一つは教育の実践的なかかわりからです。
二つ目は、身体と心の問題の関係の理解です。

ミツキの研究は高校で学習に集中しない生徒のふるまいをいかに改善するかという観点からなされました。
この研究は,専門家が書いた多くの研究を読んでなされました。
ミツキの研究の貢献は,さまざまな領域の研究を結びつけたことにあります。
これはエンゲルスの弁証法的唯物論の精神からきています。
この宇宙は一つの全体としてみられるべきです。
全体の各部分はつながりあったものとして見られるべきです。
ミツキの論文は,人体と心の関連を発見しました。


第二部、脳と飲食物、生活リズム、ストレス、運動とのかかわり

第一章、飲食物と問題行動

第一節 脳の神経伝達のしくみから飲食物と精神の関連を考える

1) 脳の神経伝達のしくみ 怒ったり、ふさぎ込んだりする感情伝達のしくみ 

[手の大きさを地球として地球に対する手の大きさを連想して考えよう] 
次の絵は、ほぼ14万2400分の一のシナプス間隙のイラストである。

 この図は、脳の中の神経細胞(ニューロン)と神経細胞を連結する部分である。

 神経細胞と神経細胞をつなぐ部分は、5万分の1ミリすき間(シナプス間隙)で接している。
神経細胞の電気信号は、このすき間の中の神経伝達物質によって次の神経細胞に伝えられる。
この神経伝達物質は分子からなりたっている。
 分子の大きさは、1億分の数センチメートルであるから、ここでは手の拳を地球として、その地球に対するピンポン玉の大きさを想像しながら、以下の部分の話を読んでいただきたい。

[脳の中の神経伝達方式]
 脳は、三種類の情報伝達の仕組みを持っている。
それは、ホルモン分泌細胞、無髄神経細胞(裸電線の神経細胞)有髄神経細胞(被覆電線の神経細胞)の三つである。
出所、大木幸介「やる気を生む脳科学」講談社、1993年、96ページ、

 このうち、感情の伝達は無髄神経細胞による神経伝達物質の分泌の多寡と種類が大きな役割を果たしている。
 この無髄神経の神経細胞は数万個と集まって、「神経核」という小型の脳を作り、脳幹の中心部に沿って、上下に、左右4列に整然と並ぶ。
この神経の末端は細かく分岐し、全脳へ分布している。
外側の二列はA系列と呼ばれ、内側の二列はB系列と呼ばれる。
A系列とB系列の神経は、相互に補完しあう関係にある。
A系列のシナプスで放出される神経伝達物質は、覚醒作用を担当し、これによって脳は目覚め、駆動され、活動をしてゆく。
それに対してB系列のシナプスで放出される神経伝達物質は、A系列の作用を調節し、コントロールし、睡眠を導く。
B系列の神経伝達物質の分泌は睡眠中が一番多く、覚醒している間にA系列の神経伝達物質は分泌され、消費される。
したがって、A系列の神経伝達物質は、昼間に備えて睡眠中に分泌可能なように準備されている。
出所、大木幸介「やる気を生む脳科学」講談社、1993年、99ページ、

[ベンゼン環をもつA系列、B系列の神経伝達物質]

 ではA系列、B系列の神経伝達物質にはどのようなものがあるか。
 まずA系列の神経シナプスからカテコールアミン類とよばれるベンゼン環を一つもったドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリンが分泌される。
それは精神を覚醒させる役割をもつ。

 そしてB系列の神経シナプスからはベンゼン環を二つ(インドール環)もったセロトニン、メラトニンが分泌される。
それはA系列の精神覚醒作用のある神経伝達物質の働きを抑制し、睡眠を導く役割をもつ。
 このようにA系列、B系列の神経系は、すべてベンゼン環で駆動され、さらに制御されている。
A系列、B系列のベンゼン環をもった神経伝達物質の分泌量のバランスの中で人間の正常な精神生活が営まれているのである。

2)脳内の神経伝達物質の分泌のアンバランスがイライラと短気をもたらす

[神経伝達物質セロトニンとノルアドレナリンの分泌バランスが円満な人格を保障する]

 神経伝達物質のセロトニンとノルアドレナリンの分泌バランスが、協調性ある円満な人格を保障し、そのバランスが崩れることで様々な行動上の問題を引き起こすことが分かってきている。
ロナルド・コチュラックは「攻撃性には体温のような設定値があり、脳の化学物質により調整されている。
ほとんどの人は、生まれつき化学物質のバランスが保たれているので、問題に理性的に取り組むことができる。
ところがこの設定値が上下してしまうと、攻撃性が増えたり、減ったりしてしまうのである」
と300人以上の脳科学研究者にインタビューした最新の研究成果をまとめている。

 すなわち神経伝達物質として知られるセロトニンとノルアドレナリンの分泌のバランスがとれていれば、円満で協調的な人格となり、もしノルアドレナリンの分泌が多すぎれば、つまらぬことにもイライラして短気になるというのだ。
セロトニンは人間の衝動にブレーキをかける働きをしており、ノルアドレナリンは衝動を突き動かすアクセルの役割を果たしている。

[積極性、攻撃性、怒りを伝達するノルアドレナリンとアドレナリン]

A神経系のノルアドレナリン、アドレナリンについてもう少し詳しくみておこう。
ノルアドレナリンは人間を覚醒させ、行動させ、活動的にさせる。
さあ戦おう、仕事をしよう、勉強しよう、運動しようというときに急激多量に分泌される。
抹消の毛細血管は収縮し、血液は活動しようとする脳の内部と骨格筋に集中する。
 ノルアドレナリンは、ストレスがかかった時に、血液中にアドレナリンとともに分泌し、体を危険に対応して喧嘩や逃げ出すなどの行動ができるように体の体制に組織するものである。
だからノルアドレナリンの分泌が高いレベルでそのまま体内に残っていることは、イライラしたり、カッときたり、短気で攻撃的な精神状態となっていることである。
 ノルアドレナリンの分子構造にCH3 がついたものがアドレナリンで あった。
アドレナリンもノルアドレナリンとよく似た神経伝達物質として使われる。
脳科学者の大木幸助は次のように説明している。
「ノルアドレナリンは怒っている時に多量に分泌され、『怒りのホルモン』といわれ、アドレナリンは驚いた時に多量に分泌され、『恐怖のホルモン』といわれる。
しかし、ノルアドレナリンもアドレナリンも常に混ざって分泌され、いずれが優位かというだけの相違である」

[活動性、攻撃性を抑制し、眠りをさそうセロトニン]

 それに対して、セロトニンはコチュラックによると「人間の感情や意欲のすべてを司る脳内の『万能調整役』であり、特に攻撃性を抑えるために重要な役割を果たしている」
したがって、セロトニンの分量が減少すると、怒りを抑えきれなくなり、すぐに暴力をふるってしまうようになるという。
 大木幸助も「セロトニンは、ドーパミンやノルアドレナリンの活動を抑制的にコントロールする。
ドーパミンやノルアドレナリンの作用はいうまでもなく快感、覚醒である。
セロトニンの分泌はこれらを調整し、睡眠を誘い、活動を適度に抑える働きをする」 と説明している。
このようにセロトニンは、ノルアドレナリンなどの覚醒性のホルモンによる過剰な活動をコントロールし、調節する役割をする神経伝達物質であった。

 したがって、セロトニンの分泌不足がおきるとノルアドレナリンの分泌によって体と精神が攻撃的体勢になった時、それにブレーキをかけることができなくなる。
「標準量のセロトニンは、原始的な衝動や感情-セックス、気分、睡眠、苦痛、攻撃性、自殺行動-を抑制する働きがある。・・・
セロトニンの分泌が少なくなると、自分を抑えることができなくなり、イライラ、短気、爆発的な怒りなどの行動があらわれやすくなるという証拠が、続々と増えてきている」とコチュラックは書いている。

 簡単に神経伝達物質の問題から食品添加物がなぜ問題になるのか説明しておこう。
まず飲食物から摂取した食品添加物などの化学物質が偽のノルアドレナリンとして怒りの情報を伝達するからである。
本来は偽のノルアドレナリンとして働く食品添加物などは身体の中で分解排除されるはずであるが、必須ミネラル不足などからそれを分解する酵素が役割を果たさなくなっている。
また偽のノルアドレナリンを抑制する役割を果たすセロトニンがやはり必須ミネラルの不足とか育て方などから分泌不足となるためである。
AB神経系の神経伝達物質の分泌バランスによる感情伝達のしくみを理解した上で、なぜ、飲食物が様々な問題行動を引き起こしているのかをみてゆきたい。

1)脳の神経伝達のしくみと飲食物の問題点 シネイコ医師の説

[神経伝達物質と分子構造が似ているフェノールを含む食品や食品添加物が神経伝達を撹乱する]

 ロバート・シネイコ医師はKey things you need to know about Dr. Sinaiko故フェインゴールド医師の仕事を受け継いで、ほぼ1300人の「注意欠陥・多動性障害」の子どもを治療し、食事療法の有用性を主張している。
生物化学の発展の中でシネイコ医師は一層詳細に「注意欠陥・多動性」の症状を引き起こす原理を説明している。
シネイコ医師は神経伝達物質を撹乱する要因として食品の中のフェノールを問題としている。
 フェノールは次の図のようにベンゼン環にヒドロキシル基(水酸基)がついたものであり、サリチル酸は、ベンゼン環にヒドロキシル基とカルボキシル基をつけたものである。

食品添加物にはマーガリンや清涼飲料水の保存料としてベンゼン環にカルボキシル基をつけた安息香酸も多い。

    神経伝達物質ノルアドレナリンもこのようなベンゼン環を中心とした分子構造をもっている。
シネイコ医師は、分子構造がノルアドレナリンとよく似ているフェノール、サリチル酸、安息香酸などの化学物質が、偽のノルアドレナリンとして作用し、精神を興奮させ、落ちつきの無さのような行動上の問題を引き起こしていると考える。
 シナプス間隙の受け手の神経細胞の受容体は、偽のノルアドレナリンを本当の神経伝達物質として受信し、まちがった電気信号を次の神経細胞に伝達すると考えるのである。
 ノルアドレナリンは、目覚め・覚醒の役割を果たしている神経伝達物質である。
これがシナプス間隙に急速にその分泌量を増大することは、より覚醒を高め、怒りや恐れなどの感情をもたらし、戦闘や逃亡のために心と身体を準備する。
したがって食品の中のこのような分子構造をもつ化学物質が、偽のノルアドレナリンとして働くゆえに、人を興奮させ、落ちつきの無い状態にさせることになる。
 薬、化粧品、食品添加物、保存料、そして人工着色料や天然のフェノールのような化学物質は水と油に分解するから、その分子は容易に細胞膜組織のバリアーを越えて脳の中に入るとシネイコ医師は考える。
  ベンゼン環をもった化合物を使えば、簡単に人間を狂わすことができる。
脳の専門家の大木幸助は覚醒剤について次のように述べている。
「ドーパミン、ノルアドレナリンというベンゼン環に目鼻という簡単な分子が、人間性、動物性の根底を作り、発揮させている。
逆にいえば、人間性を狂わすこともむずかしくない。
ベンゼン環を使えばよく、ベンゼン環をもった簡単な化合物を使えばよいのだ」
食品添加物などの化学物質は、覚醒剤とはその作用の仕方が違うにしても同じ事が言えるはずである。
 フェインゴールド医師は、ベンゼン環の分子構造をもつサリチル酸を含む食品を食事から除去することで「注意欠陥・多動性障害」の子どもたちを改善してきた。
臨床的に証明された食品添加物や食品中のサリチル酸と多動性との関連は、ベンゼン環をキーワードとして読みとくことができる。
 (ただし、合衆国のフェインゴールド協会の文書によるとベンゼン環をもった化学物質、フェノール構造をもった化学化合物がすべて神経毒として働くのではない。
体の中で神経伝達物質ドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリンに変化するアミノ酸チロシン はフェノールの構造をもっているがもちろん毒ではく、またフェノールの分子構造をもっていない着色料の黄色五号は明らかに落ちつきなく粗暴な行動に影響していると書いている。
したがって問題は単純ではないことをつけ加えておく)

[なぜ、そのような食品添加物をたべても落ちつきを失わず、粗暴にもならない人がいるのか]

 フェノールやサリチル酸を含む食事をとっても多くの人は、落ちつきを失わない。
それはなぜなのか説明しておく必要がある。

・モノアミン酸化酵素の働き
 血がのぼってもすぐにからっと怒りの治まるタイプの人間もいれば、いつまでも怒りが治まらない「しつこいタイプ」の人間もいる。
 その違いは、「怒り」の指令を伝達して使い終わった余分の神経伝達物質のノルアドレナリンを分解してその量を調節する酵素(モノアミン酸化酵素)の働きの違いにある。
残った神経伝達物質が、この酵素の働きによって撤去されないならば、怒りの伝達はつづくことになり、怒りが治まらないことになる。
もちろん食品から摂取されて偽の神経伝達物質としてシナプス間隙に入りこんだフェノールも分解されない。
 これがシネイコ医師の考えであるが、遺伝や栄養の関係からこのモノアミン酸化酵素の機能の弱い人間は、もともと気分・感情をコントロールできない上に、食品からのフェノールの摂取はよりその問題点を悪化させることになる。

・偽の神経伝達物質として働くフェノールを分解して解毒する酵素の働き
 行動や感情に混乱を与えるフェノールを取り除く「フェノール・スルホン酸トランスフェラーゼ」と呼ばれる身体の中で作られる酵素がある。
それはもともと天然にあるフェノール(リンゴなど天然のいろんな食品に入っている)が偽の神経伝達物質として伝達を妨害し、問題を起こすから、それを解毒し、身体から取り除く必要のために存在している。
 遺伝的にこの酵素が弱い人間は、食品中のフェノールが脳に侵入して偽の神経伝達物質として活動することを防御する手だてがないから落ちつきの無い人間になる。
今の時点では、酵素フェノール・スルホン酸トランスフェラーゼを体外から取り入れる有効な方法はない。
サリチル酸、フェノールを含む食品添加物や天然食品を摂取しないフェインゴールド医師の食事療法は神経伝達を妨害するフェノールを除去する意味で有効だったというわけである。
シネイコ医師はフェインゴールド医師の食事療法が成果をあげる理由の一つをここにみる。

4)アレルギーなどによる神経伝達物質の過剰消費による不足が引き起こす問題点

[アレルギーが、行動に影響を及ぼす]
 これまでは神経伝達物質と分子の構造がよく似たフェノールなどを含む食品が腸から血管を通じて脳へ影響するという食物が問題行動を引き起こすルートを説明した。
 食品添加物や食物が消化されて行為の変化を引き起こすもう一つのルートがあるとシネイコ医師は考えている。
アレルギーをひきおこす食べ物を食べた時に行為に影響するルートである。
 アレルギー反応とは、たとえば本当は無害である小麦やミルクなどを侵入してきた異物と認識し反応することである。
このアレルギー反応による免疫システムの活性化で頭脳の中で神経伝達物質を多く消費する。
そのために脳の中での神経伝達物質の供給が不足することで、神経伝達のレベルを下げ行動に影響することになる。
それは次のようなメカニズムのためである。

[受容体の数の増加でノイズを発生させ、神経過敏に]
 もし、長い期間、飲食物によってアレルギー症状にあったら、脳は、その免疫反応で神経伝達物質を減少させてしまう。
受ける側の神経細胞は、その受容体の数を増やすことで少なくなった神経伝達物質をキャッチしやすくする。
受容体の数の増加は、神経伝達物質がより多くキャッチされることを意味しているけれども、同時に、余分の受容体をもつことで、本当の信号でないノイズまでキャッチしてしまうことになる。
たとえば、ラジオの声の音量が小さいので音量をあげたら同時に雑音も大きくなるようなものである。
神経細胞は今度はより興奮しやすくなり、本当のメッセージと背後にある「ノイズ」との区別ができにくくなる。
これがシネイコ医師の考える長期にわたってアレルギーの原因になる異物に接した場合の行動への影響のメカニズムである。
 受け手の受容体の数が増えて、覚醒、怒り、恐れを伝達する神経伝達物質ノルアドレナリンが少量増加しても敏感にキャッチできることになるから、ちょっとしたことでカッときてしまうことになる。

[アレルギーその他の理由で神経伝達物質が不足するもう一つの問題点]

1)脳神経の二つの状態の切り替え

 ストレスやアレルギーや睡眠不足などで神経伝達物質分泌量が不足すると受け手の側の神経細胞の受容体が増えて神経過敏になるという問題とは別にその分泌量の不足は、受け身の集中力への切り替え(反応転換)をできなくするとシネイコ医師は考えている。
 神経伝達物質の一定量は、脳神経の「反応転換」が行われるために不可欠なのだそうだ。
「反応転換」とはどういうことか。
テニスのプレイにたとえると、ボールを打つ状態は、脳が「組織された状態」という。
ところが相手がボールを打ち返すのを待つ時はボールがどこにきて、どう反応すればいいかわからないという集中した受動状態の時期がある。
これを「非組織的な」脳の状態という。
この時、脳は次にどんな行動が必要とされても瞬時に準備ができていなけれはならない。
テニスのプレーでは、この二つ脳の状態の間を交互に絶えずスイッチの切り替えをしなければならない。

2)脳の二つの状態の切り替えには十分な神経伝達物質の量が必要とされる。

 シネイコ医師によるとアレルギー反応で神経伝達物質を消費してシナプス間隙にその量が減少すると、脳の「非組織的」な、受動的な集中状態への転換に必要な神経伝達物質の量が不足し、このような受け身の集中力をもつことができない症状となる。
 シネイコ医師は、アレルギー反応による神経伝達物質の不足状態を問題にしている。
しかし、神経伝達物質の不足の原因は、アレルギー反応の他に、いじめなどの継続的ストレス、不規則な生活による睡眠不足、ミネラルも含めた神経伝達物質を合成するための必要栄養素の不足などが考えられる。
これらの原因による神経伝達物質のシナプス間隙での不足も、受け身の集中力の無さ、脳の「非組織的な状態」への転換ができないという症状を生む。

3)腸の問題が、神経伝達物質の不足または偽の神経伝達物質の問題をひきおこす

 シネイコ医師は、次のように抗生物質の問題点をあげる。
細菌による病気に対してもちろん抗生物質は有用であるが、抗生物質の多用は腸内の有益な微生物の腸内フローラに変化をきたし、結果的に有害菌の数を増やす。
有害菌の腸のばく大な数の増加は、食べ物などのアレルゲンと同じように免疫システムの活性化を引き起こす。
免疫の活性化は神経伝達物質ノルアドレナリンの利用可能な供給量を使い尽くし、脳の中の化学的信号の量を減らしてしまう。
そこでアレルギーのところで述べたような問題を引き起こす。
すなわち受け手の神経細胞の受容体の数の増加で興奮しやすくなり、信号の異常発火によりノイズが発生してしまうことと神経伝達物質の量の不足で脳が「非組織的状態」と「組織的状態」の間をうまくスイッチの切り替えができにくくなることである。
 また増加した腸の中の有害菌は、様々のフェノール化合物を生み出す。
すでに述べたようにフェノール・スルホン酸トランスフェラーゼと呼ばれるフェノール化合物を分解する酵素が不足する子どもの場合、フェノールが脳の組織の中に達する。
そこでフェノールが偽の神経伝達物質として神経伝達に混乱を与えることになる。
脳の機能は一層低下し、行動にも問題を引き起こしてしまうことになる。

 ここでシネイコ医師は薬である抗生物質の多用は腸内に悪玉菌を増やし、注意欠陥・多動性をもたらすという戒めを述べているが、腸内フローラに悪影響を与えるのは抗生物質だけではない。
食事が大きな影響を与える。
加工食品に偏り、食物繊維が不足しがちの現代の食生活は、腸に問題を引き起こすと言われている。
腸内有益菌の繁殖のためにヨーグルトだけでなく、味噌や醤油などの伝統的な発酵食品が見直されている。
遺伝的にフェノール・スルホン酸トランスフェラーゼが少なく食物に反応して落ちつきをなくす人間の場合は、同時に腸の善玉菌をふやす方向の食事が必要だということになる。

6) 短気でなく協調性のある人格のために=セロトニンの分泌不足を防ぐ 

[攻撃性を抑制する役割とともに自分に対する満足感と自己肯定感情を伝達する役割をもつセロトニン]

 セロトニンはノルアドレナリンの活動性、攻撃性を抑制する役割とともに自分に対する満足感情を伝達する役割を果たしていることが、明らかになっている。このことについてもっと詳しくみてみよう。
 高田明和は、セロトニンの分泌不足のために自分を評価できない弁護士Bさんの事例をあげている。
 弁護士B さんはいつも自分に価値をおくことができず、ときどき不安感にさいなまれていた。
精神科医にかかってブロザックというセロトニンの量をふやす薬を処方された。
すると不安とウツの気持ちが薄れ、自分のやってきたことに価値をおくことができるような気持ちになった。
薬なしでもやってゆけるようにしようとすると、B さんの精神状態はもとにもどってしまった。
 このことからセロトニンの十分な分泌は、怒りの抑制だけでなく自分に対する自信と満足、自己肯定的な感情をもたらすものであることがわかる。
このことは、自分を不遇だと思っている人が怒りやすく、幸せだと感じている人はあまりカッーとこないものであるから常識的にも理解できる。

[食生活の重要性]

  セロトニンを形成するトリプトファンは、人間の体内で作られるものではなく、食物として体外から摂取する必要がある。
したがって栄養としてそれをとっていなかったらセロトニンは不足することになる。
トリプトファンが、セロトニンに転化するにあたっては、トリプトファン・ヒドロキシラーゼやビタミンB6を必要とする。
 したがって、トリプトファン、ビタミンB6、そしてトリプトファン・ヒドロキシラーゼという酵素を活性化する微量ミネラルを含む食物が不足するとセロトニンの分泌が不足することになる。
これらが含まれている食品は、「良質の動物性、植物性タンパク質のほか、胚芽やフスマなど精製した穀物では捨てられてしまう部分やドライフルーツや植物の種子」である。

[セロトニン形成を妨害する飲食物(加工食品、スナック菓子、ジャンクフードなど)を摂取しない]

 飲食物からトリプトファンからセロトニンへの転換を妨げる要素を避ける必要もある。
東京医科歯科大学の服部淳彦は、「ビタミンB6は不足しやすいビタミンの一つで、タバコを吸う人、酒を飲む人、加工食品を多く食べる人は、普通の人よりビタミンB6をたくさん食べる必要がある」と言っている。
加工食品による食事、スナック菓子やジャンクフードの間食を避け、セロトニン形成を妨害する飲食物を避ける必要がある。

7) ノルアドレナリンの分泌過剰を防いで、切れない子にするために 

[モノアミン酸化酵素の活性のために過不足のない微量ミネラル摂取の食事の必要性]

 ノルアドレナリンの過剰分泌は感情的には怒りや恐怖にかかわり、セロトニンとのバランスを崩す時に攻撃的で暴力的になるのであった。
 神経細胞をつなぐわずかなすき間に充満して多くなりすぎたこのノルアドレナリンなどの神経伝達物質を危険な量まで蓄積しないように分解するのがモノアミン酸化酵素である。
もしこのモノアミン酸化酵素がない人間がいたとしたら、いったん怒りはじめると怒りがおさまらないということになる。
 実際、オランダのハンス・G・ブルンナーは、1994年にノルアドレナリンを分解する酵素を作ることができない変異遺伝子を発見した。
 これは遺伝的にモノアミン酸化酵素の働きが弱い人間がいるということであるが、薬によってもモノアミン酸化酵素の働きが阻害され、行動に影響することが指摘されている。
 フロイド・E. ブールムらの『脳の探検』という本に次のように書かれている。
「結核患者にある新しい薬物を投与すると、行動が過剰になり、そう病に似た状態が出た。
これは脳と肝臓にあるモノアミン酸化酵素をこの薬物が阻害するからである」
つまり、その薬でモノアミン酸化酵素の働きが阻害され、ノルアドレナリンが分解されず、「行動が過剰」すなわちハイパーアクティブになるというわけである。
 栄養としての微量ミネラル不足からモノアミン酸化酵素の働きが弱い場合も行動に影響するとの指摘がある。
アメリカの応用栄養学者アレクサンダー・シャウスの著書には「鉄」などの微量ミネラルががモノアミン酸化酵素の形成に役割をはたしており、それらの不足はモノアミン酸化酵素の形成を妨げるから、「過剰反応」し、「行動障害」に関連していると述べている。
 このようにモノアミン酸化酵素を活性化する鉄などの微量ミネラル類が不足するならば、この酵素を作る遺伝子に問題がなくても、脳内分泌物ノルアドレナリンなどの分解が阻害されるために怒りや不安などの感情がなかなかおさまならないことになる。
 モノアミン酸化酵素が分解するのはノルアドレナリンだけではない。
いったんシナプス間隙にさまざまの神経伝達物質が分泌されてその多寡で一定の感情が形成されたら、モノアミン酸化酵素の働きが弱い場合は神経伝達物質が分解されないからその感情はながく心に残ることになる。いつまでもくよくよしてしまう性格となる。または怒りだすとしつこくいつまでも根にもつ性格ということになるはずである。

[フェノールを含む食品、とりわけ加工食品、飲料などを摂取しない]

 すでに述べたようにノルアドレナリンの噴出だけでなく、偽の神経伝達物質として機能するフェノールを含む食品添加物を避ける必要がある。
体質的にフェノールを分解する酵素の力の弱い人間は、食品添加物を摂取してからしばらくすると偽のノルアドレナリンが神経シナプスに増加することで落ちつきをなくしカッときやすく粗暴になる。
 もちろん、フェノールを分解する酵素の働きがしっかりしている人間は、食品中のフェノールを摂取してもシナプス間隙までそれが到達しないから行動に影響することはない。
加工食品中心で野菜、海藻などの不足する食事を続けているとフェノールを分解するフェノールスルホン酸トランスフェラーゼを活性化させる微量ミネラルが不足して遺伝体質的にはフェノールの影響を受けないはずの人間まで、食品中のフェノールに反応して行動に問題をおこすことになる。
 またオレンジなど自然の食品中に含まれるフェノールには、遺伝的にフェノールの分解酵素の弱い特定の人間だけが反応するであろうが、食品添加物の摂取は人類にとってここ数十年の出来事であり、多くの子どもたちが食品添加物中のフェノールに身体が対処できず、反応している可能性がある。

8)糖分過剰摂取もノルアドレナリン過剰分泌型の脳にする

[低血糖をもたらす糖分過剰摂取]

 糖分の過剰摂取が行動に影響するメカニズムは、それによって低血糖の症状となり、低下しすぎてしまった血糖値をあげるためにアドレナリンが分泌され、それに連動して神経伝達物質のノルアドレナリンが分泌され、怒りっぽい体質となるということである。
なぜ、糖分の過剰摂取が血糖値を低下させるのか。
それについて大沢博は次のように説明する。
「砂糖の場合は、血糖値が急に上がって、急激に下がる。
これは砂糖が分子二つの二糖類で早く分解吸収されるために血糖値が急上昇する」
そして今度は、「高すぎる血糖値を下げようとしてインシュリンがたくさん分泌され」血液中の濃度を下げすぎてしまう。(大沢博)
つまりジュースやケーキ、菓子などに多量に含まれる糖分を摂取することでインシュリンが過剰に分泌してしまい、血液中の血糖値の濃度を下げすぎてしまうのだ。
この状態を低血糖の症状という。
 血糖は身体全体の細胞のエネルギー源であるから糖分摂取による血糖値の上昇は疲れた時に一時的には元気をだすにはいいが、過剰摂取では、血糖値が下がりすぎて一層、身体はエネルギー不足となる。
主食として米粒は砂糖と違って分子がたくさんあるために分解吸収がゆっくりで血糖の曲線が安定している。

 攻撃的になりやすく時には暴力をふるうことになるのは低下した血糖をあげるためにアドレナリンが副腎から血液中に分泌されるためである。
それは同時に交感神経系のノルアドレナリンの分泌を促すことであり、脳内のノルアドレナリンの分泌にも連動してカーッときやすい粗暴な体質を作るのである。
 アドレナリン、ノルアドレナリンは、エネルギー源であるブドウ糖の量を急増させ、全身を活動させる準備をするとともに、神経伝達物質として精神の覚醒作用を担当しているものであった。おそらく原始時代に人間が食料がなくエネルギーとしての糖分が低下した時に獲物を獲得するための活動にむけて血糖値をあげる必要があり、同時に攻撃のために意識を覚醒する役割のノルアドレナリンが分泌されたのではなかろうか。
腹が減って血糖値が下がったときにイライラと攻撃的になることはシステム自体は生命維持にとって理にかなっていることだが、糖分の過剰摂取によって引き起こされた低血糖は原始時代にはなかった。

[低カロリー食も人をきれやすくする]

 ダイエットによる低血糖でも人間は粗暴になる。
コチュラックは次のような調査結果を紹介している。
「ダイエットをしている人は怒りっぽくなる。
予備調査の結果によると、何百万人もの良心的な人々が守っている低カロリー食が、人を直情的にし、乱暴な振る舞いにおよびやすくしていることが証明されている」
ダイエットによる低カロリー食で、お腹が空いた時にイライラしてしまうということも糖分の過剰摂取による低血糖で攻撃的になるメカニズムと原理は一つである。
 ダイエットや糖分の過剰摂取による低血糖も、昔のように米などを主食として食べて、砂糖を含むジュース、ケーキ、お菓子の類を減らすことが大切な対策となる。

第二節 必須脂肪酸から合成されるプロスタグランディンE1を中心とした飲食物と多動性の関連の説明

1)HACSGのプロスタグランディンE1にもとづく説明

[フェインゴールド医師の意志をひきつぐイギリスにおける後継者たち]

 HACSG(ハイパーアクティブの子どもを支える会)とは、フェインゴールド医師のアドバイスによる食事療法で自分の子どもがよくなったイギリスの主婦サリー・バンディが会長をつとめるボランティア団体である。
当該のハイパーアクティブチィルドレンすなわち注意欠陥・多動性障害の子どもたちの保護者そして教師、医師、栄養士、心理療法士など幅広く大衆、専門家を巻き込んでいるのでより実践的で、単に食品添加物を食べないだけではなく、落ち着きを取り戻す栄養素として何を食べねばならないかまで実践的に明らかにしている。
 これまでの神経伝達物質を中心とした説明に対してイギリスのHACSGは必須脂肪酸より合成されるプロスタグランディンE1という物質をキー範疇として統一的な説明をしている。
以下にHACSGの説を紹介しよう。

[注意欠陥・多動性の症状をひきおこす必須脂肪酸の不足の発見]

 イギリスのHACSGに協力する研究者たちは、サリチル酸の分子構造に類似したものをもつ食品、食品添加物、薬品を避けるというフェインゴールド医師の基本に基づきながら、さらに研究を深めていった。
1979年に調査したHACSGの会員の子どもの調査から「注意欠陥・多動性」の症状をひきおこす可能性のある原因として「必須脂肪酸の不足」の問題を発見した。
必須脂肪酸とは、リノール酸やリノレン酸のように体内で合成されず、かならず食物から摂取しなければならない脂肪酸のことである。
必須脂肪酸の不足はプロスタグランディン類という体内物質を不足させることになる。
そのプロスタグランディン類の中で落ちつきの無い子、衝動を抑えることのできない子にかかわるのはプロスタグランディンE1である。

[喉の渇く子に落ちつきの無い子が多い]

 HACSG発行のパンフレットによれば、プロスタグランディンE1は、行為、免疫システム、腎臓と渇き、喘息をコントロールしている物質である。
そしてプロスタグランディンE1の不足が、落ちつきなく衝動を抑えることができない「注意欠陥・多動性障害」の子どもたちを生んでいる原因の一つである。
 HACSGの会員を通じた調査によると「注意欠陥・多動性」の症状の子どもたちの5分の4は常に喉の渇きを感じている。
これはプロスタグランディンE1が喉の渇きもコントロールしているからである。
 またHACSGの会員の子どもたちのほぼ5分の4は、湿疹,喘息,アレルギーや咳風邪、耳、腹部の感染症など何らかの健康上の問題を繰り返しおこしていた。
これもプロスタグランディンE1の不足が「注意欠陥・多動性」の症状を引き起こすとともに免疫システムを弱体化させることから説明できる。
「注意欠陥・多動性」の症状への食事による対処は、全般的な免疫力を強化することにもつながることになる。
HACSGの食事療法をしている会員の家族は、当該の子どもと同じ食事をするので家族全体の健康水準が上がっているとのことである。

2)プロスタグランディンE1が不足すると「注意欠陥・多動性」の症状になる

[なぜ、プロスタグランディンE1が不足するのか。飲食物にかかわる三つの原因]

 HACSGはプロスタグランディンE1の不足を引き起こす原因として、第一に、その素材である必須脂肪酸の摂取不足、吸収不足、第二に、プロスタグランディンE1に化学変化をしてゆくさいに必要とされる亜鉛やビタミン類の摂取不足、第三にサリチル酸や着色料など、必須脂肪酸のプロスタグランディンE1への化学変化を妨害する要素の三つをあげている。
したがって「注意欠陥・多動性」の症状を予防、治癒するためには、脳の物質プロスタグランディンE1を形成することを妨害するサリチル酸などを含む食品を徹底的に排除することと、その物質のもとになる栄養素である必須脂肪酸やビタミン・ミネラルの適量の摂取が必要ということになる。それではそれを一つひとつ見てみよう。

[第一に材料である必須脂肪酸の不足]

 「注意欠陥・多動性」の症状の原因として考えられる第一は、プロスタグランディンE1を形成する必須脂肪酸自体の摂取不足または体内への吸収不足である。
必須脂肪酸はビタミンのように体の中で作られない。
したがって必須脂肪酸を含む植物油などを食事で摂取する必要がある。
また、下痢、便秘などで腸の消化吸収力が落ちている場合も必須脂肪酸の不足を引き起こす原因となる。
 HACSGの会員の「注意欠陥・多動性」の症状の子どもたちは、女子より男子の数が多い。
それは、女子より男子の方が必須脂肪酸をより必要としているからそれを不足させやすいからである。

[第二にプロスタグランディンE1への転換のために必要な亜鉛などの微量ミネラル、ビタミンB3、B6 、ビタミンCの不足]

 「注意欠陥・多動性」の症状の原因として考えられる第二は、必須脂肪酸からプロスタグランディンE1に転換するために必要な共働要素の不足である。
 食物から摂取したシス型リノール酸 がプロスタグランディンE1に転化するまでには第一ステップとしてガンマ・リノレン酸への段階と第二ステップのディホモ・ガンマ・リノレン酸への段階を経由する。
 食物から摂取したシス型リノール酸が第一ステップのガンマ・リノレン酸へ変化する時に、亜鉛、インシュリン、マグネシウム、ビタミンB6の不足が問題となる。
さらに第一ステップのガンマ・リノレン酸から第二ステップのディホモ・ガンマ・リノレン酸に変化する時に、亜鉛とビタミンB6の不足が問題となる。
そして第二ステップから最後のプロスタグランディンE1へ転化する時にビタミンCとビタミンB3の不足が問題となる。
したがって、これらのミネラル・ビタミン類を含む食事が大切ということになる。
 バーミンガムのアストン大学の環境衛生学部のF.J.バーロウ医師が、「注意欠陥・多動性」の症状の31人の男子と15人の少女について毛髪の分析をおこなったら男子は31人のうちの24人と、女子15人中7人が、亜鉛の値が標準値よりも低かったという。
また「注意欠陥・多動性障害」の子どもたちは亜鉛が非常に少ないことがサリー大学でも確認されている。

[第三にプロスタグランディンE1の形成を妨害する諸要素の摂取]

 「注意欠陥・多動性」の症状の原因として考えられる第三は、食物から摂取したシス型リノール酸からプロスタグランディンE1へ化学変化を遂げてゆく過程を妨害する諸要素である。
 第一ステップへの転化を妨害する要素としては、脂肪で飽和したトランス型の脂肪酸とコレステロール、そしてアルコールの取り過ぎ、発ガン性のウィルス、発ガン性の化学物質、イオン化作用のある放射線などがある。
 第二ステップから第三ステップすなわちプロスタグランディンE1への転化を妨げる要素としては、サリチル酸、タートラジンなどの着色料、腸に問題がある時に生成される小麦やミルクの消化の産物の麻薬様物質などががある。
 シネイコ医師はサリチル酸、フェノールを偽の神経伝達物質として働くことでその除去を根拠づけたが、HACSGは、行動をコントロールする機能をはたすプロタグランディンE1の形成が、食品添加物などに含まれるサリチル酸やタートラジンなどの着色料などによって妨害されることに根拠づけている。
これらの両方のルートが、相乗効果をもって子どもたちの多動性を引き起こしている考えられる。

[フェインゴールド医師の食事療法を発展させたHACSG]

 フェインゴールド医師の食事療法とは、天然の食物から食品添加物、薬にいたるまでサリチル酸を含む食べ物をいっさい除外して「注意欠陥・多動性」の症状が直ったことを確認する。
その次の段階で一つひとつサリチル酸を含む食品を食事の中に加えてゆく。
そしてその子が特別に反応する食品を特定するというものであった。
そのようにしてその子の落ちつきの無さをひきおこしている食品を除去した食事を続けて生きてゆくというものである。
 HACSGは、サリチル酸を除去する食事療法とともに必須脂肪酸の不足の問題を克服するために月見草オイルを食事に使い、またそれがプロスタグランディンE1に転化するにあたって必要な亜鉛やビタミンB3、B6 、ビタミンCなどを含む総合ビタミン剤(無添加のもの)を食事のサプリメントとして補給している。
 この療法は家族や周囲の理解と協力が欠かせない。

第三節、ビタミン、ミネラルの過不足、脂肪酸の種類と問題行動とのかかわり

第一節 酵素、補酵素の活性に不可欠なビタミン・ミネラル 

私たちの身体は、細胞内外に酵素、補酵素分泌し、それらを触媒として化学物質を合成・分解する代謝活動をおこなっている。
脳の内部も例外ではない。
そしてタンパク質からなる酵素、補酵素は、ビタミンと微量の金属イオンを必要としている。
つまり適量のビタミン類と必須ミネラルがバランスよく体内に存在しなければ、代謝がスムーズにおこなわれず、精神活動と行動に問題がでるのである。
有毒なヒ素や鉛などのミネラルは酵素による代謝能力を妨げるので有毒なのである。
体に有用な必須ミネラルもアンバランスな濃度で存在したり、高い濃度であれば酵素の能力を妨げ、有毒となる。
 したがって、ビタミン各種と必須ミネラルのバランスのよい摂取は、脳の神経細胞の正常な活動とって必要不可欠である。
以下にビタミン、ミネラルの精神と行動にとっての重要性を主として臨床的研究を参考にみてみよう。

第二節 ビタミン類の不足も問題行動を引き起こす

[ビタミンC、ビタミンB3、ビタミンB6の不足は「注意欠陥・多動性障害」の子を生み出す]

すでに必須脂肪酸からプロスタグランディンE1を形成する上で、ビタミンC、ビタミンB3、ビタミンB6、亜鉛の必要不可欠であるとするHACSGの理論を説明した。
HACSGは、会員の多くの母親から添加物を含まないビタミンBの総合剤のサプリメントなどとビタミンCを、毎日摂取した結果、子どもたちがよくなったという報告を受けている。
 またノルアドレナリンの役割を抑制して円満な人格を保障するセロトニンの形成においてもビタミンB6が必須であることはすでに述べた。

[糖質代謝に不可欠なビタミンB1]

 朝、ご飯を食べてこない人間は、血糖が不足してきてエネルギー不足となって物事への集中力がなくなる。
このような炭水化物の摂取不足によるエネルギー不足だけでなく、ビタミンB1の不足も同じ結果をもたらす。
脳も筋肉も血糖が燃焼することで活動エネルギーを得るのであるが、血糖が体内で燃焼するにはビタミンB1も必要としている。
ビタミンB1が不足すると糖質の代謝が低下し、ピルビン酸や乳酸が蓄積し、筋肉疲労の原因となり「体がだるい」症状を引き起こす。

[糖質の過剰摂取と加工食品の使用がビタミンB1を不足させる]

 ビタミンの専門家の中川嘉雄は「ビタミンB1は、神経の伝導に重要な役割をはたし、神経機能を正常に保つ作用がある。
足りなくなると全身倦怠感、動機、息切れ、また神経障害をきたし、筋力の低下、皮膚感覚のまひ、手足のしびれ、むくみがおきる」と述べている。
さらにビタミンB1の不足の背景として
「原因は、ケーキ、ジュース、菓子などの糖質を必要以上にとったり、加工食品ばかりとっていて、確実にB1不足となる」と述べる。

[衝動を抑制コントロールするビタミンB1]

 ビタミンB1の摂取が非行や犯罪行動を減少させうるというアメリカの研究を紹介しよう。
 それによるとビタミンB1が衝動を抑制コントロールする栄養素であることが判明したという。
これを証明するため、二人の医師が、衝動のコントロールがうまくできず、自分への批判に上手に対処できず、興奮しやすく、怒りっぽい10歳代の少年たちを調査した。
彼らの多くは、胸痛、睡眠不良、落ち着きのなさ、不安、慢性疲労、頭痛などの症状を伴っていた。
彼らのビタミンとミネラルの調査の中で、血中ビタミンB1の値が非常に低く、一種の境界線上の脚気であることがわかった。
そこで医師たちはビタミンB1の処方をした。
二ヶ月後の調査では、彼らの問題行動のすべてが消えていたし、他の症状も消えていた。
ビタミンB1の補給で、なぜ行動がよくなったのかについてシャウスは、行動を抑制する有髄神経系の神経伝達物質ギャバの機能をビタミンB1の不足は妨げるからだと考えている。
 このシャウスの解釈が正しいかどうかは別として、自分への批判に上手に対処できず、興奮しやすく、怒りっぽい10歳代の少年たちがビタミンB1の投与でよくなったという事実は、 ビタミンB1が不足することで問題行動を引き起こす場合があることを示している。
 医師たちは、その問題行動をおこしていた少年たちが、精白炭水化物の多い食事をしていたことを明らかにした。
精白した米やパンには炭水化物の代謝に関与するビタミンB1がなくなっている。
ビタミンB1を炭水化物とともに摂取するには白米よりは玄米を食べたほうがいいということである。
それがいやならビタミンB1を含む食品を意識的に摂取させるしかない。

 第三節 微量ミネラルの不足も問題行動を引き起こす

[微量ミネラルと行動の関係についてのフェインゴールド医師の言及]

 すでにフェインゴールド医師は、体内におけるミネラルの不足または過剰が人間の行動を影響することを予見している。
「1957年以前には基本的な微量元素(鉄、銅、ヨウ素、マンガン、亜鉛、コバルト、モリブデン)が知られていた。
これらにさらに七つが加えられた。
つまりセレン、クロム、錫、バナジウム、フッ素、シリカ、ニッケルである。・・・
微量元素のいくつかは、その過不足によって人間の行動に影響するかもしれない。
われわれがそれらの役割についていくらかの真の理解を得るまで、われわれはこれらとさらに多数の合成化学物質の相互作用を知るチャンスはほとんどない」
 フェインゴールド医師がこのように指摘してからすでに20年近く経っている。
ミネラルの過不足の問題についても研究が進み、体の健康の問題との関連ではその重要性が解明され、かなり一般的な常識となってきた。
精神や行動とミネラルの関係については、犯罪や非行をおかした少年の毛髪検査による状況証拠から研究がなされてきた。

[微量ミネラルの不足が問題行動を引き起こす]

 HACSGの文献を読むと、必須ミネラルとしてのカルシウム、鉄と亜鉛とマグネシウムなどの不足も問題を起こすと述べている。
 日本のミネラルの専門家桜井弘は、少年院に送られる入所前後の微量ミネラルの濃度の調査ついて「入所後の食事の変化で、少年たちは心安らかな少年へと変貌したという。
食事の変化により増えた金属は、カルシウム、マグネシウム、鉄、銅、亜鉛、マンガン、セレンおよびクロムの八元素であった」 と紹介している。
そのうち特にカルシウムについては、少年院に入所直後の毛髪1グラムあたりのカルシウム578マイクログラムから、7カ月後には970マイクログラムに大幅に増加していた。
「一方、逆に減ったのは、ナトリウム、カリウムとコバルトであった。
血管を収縮させ、短気にさせるナトリウムは、七ヶ月後にはじめの半分以下となった。
少年たちは、日ごろポテトチップスなど塩分の多いスナック菓子を過分にとっていたため、精神的に不安定な状態にあったと見られる。
このように、食生活の乱れや偏りは、精神や行動とかなり関連していると考えられる。
とくにカルシウムは、・・・精神生活を安定させるためにも、十分にとることが必要であろう」
 このように ミネラルの専門家も精神と行動と食生活のかかわりを指摘している。
ここでは、いくつかの必須ミネラルの不足の問題について紹介しよう。

[亜鉛]
 亜鉛の不足が「注意欠陥・多動性」の症状を引き起こすメカニズムについては、HACSGの説明すなわちプロスタグランディンE1の形成のために必要なミネラルとしてすでに述べた。
 健康のために亜鉛が必要なことは今や常識になっているが、人間の精神と行動にとっても亜鉛は必要不可欠のものである。
 シャウスによれば「ミネラル、たとえば亜鉛は、今や脳が機能するのに絶対不可欠と考えられている。
脳の中のほんとうにすべての酵素反応に、亜鉛を必要としている」
そして「脳におけるあらゆる酵素反応に亜鉛が必要であり、海馬(短期記憶に必要)などの多くの脳領域に豊かに集中している」

   テレビ番組の「発掘、あるある大事典」で、亜鉛の不足を問題にしていた。
番組の企画で、亜鉛の過不足を調べるために若い女性50人を血液検査した。その結果は次のようであった。
 潜在的亜鉛欠乏症の「この若い女性たちの大半が亜鉛欠乏と考えてもいい」と日本大学教授の冨田博教授はコメントしていた。
(関西テレビ「発掘、あるある大事典」1998年1月4日放映より)
冨田教授によるとアメリカ、ドイツ、イギリス、カナダでは亜鉛摂取の一日の必要量が定められていて、男性の場合一日15・は摂取の必要があるとされている。
日本人の平均の摂取量は一日9・で、若い女性にいたっては一日6・ということであった。
番組では、大粒のカキ一つに20・含まれていることが紹介された後、昔ながらの和食を食べていたらそのお米から日本人の必要とする亜鉛量の一日10・を摂取できることを紹介していた。
HACSGの説によれば、行動をコントロールするプロスタグランディンE1の形成が亜鉛不足で妨げられるわけである。
 食品添加物が亜鉛の働きを妨害し、そのために事実上亜鉛不足と同じ症状を食品添加物の摂取が作り出している。
HACSGによるとサリー大学の研究はだいだい色の着色料であるタートラジンが体内で亜鉛の活動を妨害していることを確かめたという。
必須脂肪酸のプロスタグランディンE1への転化における亜鉛の必要性についてはすでに述べた。
身体の中でタートラジン EI02 は、亜鉛を使用できないようにキレート[はさみ=金属と化合してキレート環をつくる]要因として作用するからであるという。

[カルシウム]
 日本は火山国だからリンが多く、ほとんどの国民が慢性的カルシウム不足だと言われている。
桜井弘は、「カルシウムが欠乏すると、筋肉や神経の興奮が抑えられなくなったり、神経や脳の正常な機能が維持できなくなる。・・
また精神的にも落ち着きがなく、いらだちや被害妄想が見られることもある」と述べている。
 神経繊維を流れる電流は一価イオンのナトリウムイオンとカリウムイオンである。
そして、この一価イオンの活動の裏には必ずカルシウムイオン、マグネシウムイオンのような二価イオンが関与し、触媒的に作用している。
これらのイオンの存在比率がどのように神経機能に影響するかについて山本喜男、浜口陽一共著「基礎栄養化学」というテキストは次のように述べる。
「神経組織の感受性は次のようなイオンの比に影響される。     
 NA+ +K + + OH -   CA++ + MG++ + H+
いま、 ca が減少してこの比が大きくなると、敏感性が増す。」
 つまりカルシウムが不足すれば敏感性が増し、必要以上に感じることを示している。
カルシウム不足が精神に大きな影響を与えることは次のアメリカの栄養学者ジーン・カーパーの文章はよく示している。
 「ベンランド博士は正常月経周期の女性を2グループに分け、カルシウムの摂取量600・と1300・の食事のいずれかを六カ月間つづけてもらった。
その結果、600・の女性は月経の始まる前の週に気分変動が大きく、怒りやすくなり、くよくよ悩み、泣き叫び、ふさぎ込む、などの症状が激しかった。」

[マグネシウム]
 マグネシウムはカルシウムと一対一の比率で摂取することが望ましいと言われ、対になって機能している。
カルシウムと同じようにマグネシウムも二価イオンとして神経伝達に重要な役割を果たしている。
神経組織の感受性についての「栄養化学」のテキストの次の式からすると
NA+ +K + + OH -   CA++ + MG++ + H+
カルシウムが不足すれば神経の敏感性が増すのと同じことがマグネシウムについても言える。  大沢博は、マグネシウム不足の症状について「興奮しやすい、神経過敏、嗜眠、うつ、錯乱などである」としている。
 またシャウスは著書の中で、サラブレッドの名馬が御せなくなったので獣医が調べたところマグネシウム不足であることがわかり、マグネシウムを飼料に加えたら、一週間足らずで乗れるようになったこと、屠殺場に運ばれていく豚の群が暴れて傷つけあい、肉の質が落ちるので、調べたらマグネシウム不足だったので、マグネシウムを注射したら暴れなくなったことなどを紹介している。
 マグネシウムも、HACSGの研究によれば行動をコントロールするプロスタグランディンE1へ必須脂肪酸が転換する上で必要な共働要素の一つであった。
したがってマグネシウムの不足はプロスタグランディンE1の不足または機能不全とも関わっている。
 現代の子どもたちにマグネシウムが不足している可能性は大きい。
大沢博 の紹介するところによれば、岩手県内のある小学校の昭和38年の児童の毛髪分析では平均86ppmあったマグネシウムは、昭和61年には20ppmであった。
最近の分析結果の最低値は7ppmで、マグネシウムの不足も今日の子どもたちの様々な問題の背景にあることを予感させる。

 [鉄]
 野菜の摂取不足とか女性の生理時などで鉄分の不足が言われている。
鉄の不足も「注意欠陥・多動性」の症状の悪化をもたらす。
鉄欠乏が、問題行動をひきおこすメカニズムは、三つある。
一つは、大沢博があげていることであるが、鉄が脳の活動に必要な栄養素の処理を助け、酸素を運ぶヘモグロビンにとって必須のミネラルであることである。
鉄の不足は脳を酸素不足にする。すると脳は鋭敏さを失い、忘れやすくなり、注意力を失うわけである。
鉄の不足が行動の問題を引き起こす二つ目のメカニズムははすでに述べたことであるが、過剰になったノルアドレナリンなどの神経伝達物質を分解処理するモノアミン酸化酵素が鉄などの微量ミネラルを必要としていることである。
 鉄欠乏が問題行動をひきおこす三つ目のメカニズムは、鉄欠乏が脳の認知機能を害するということである。
シャウスは、鉄は脳の認知機能に影響しているというアメリカの連邦農務省の人間栄養研究センターの研究を紹介し、鉄の欠乏は言語認知機能の低下をもたらし、相手の立場にたって思考する能力を奪うので問題行動をおこすと考えている。
問題を起こす人間は、その行為の結果を相手の立場にたって考えたり、やったことの結果がどうなるかを認知できないことにも起因しているからである。

第四節 ミネラルのアンバランスと有害金属も精神と行動に問題を引き起こす

 有害金属の摂取、ミネラルの過剰摂取は健康だけでなく「注意欠陥・多動性」の症状や非行に関連している。
HACSGは「鉛、カドミウム、アルミニウムと銅の毒性のレベルは、健康だけでなく、『注意欠陥・多動性障害』にも関連している」と述べている。
この問題は、とりわけ非行型に関連しているようである。

[リン酸摂取を禁じる食事療法でよくなった子 マグネシウムとの相対濃度の問題 加工食品、炭酸飲料の危険]
加工食品は体内を酸性化してマグネシウム、カルシウムを骨から溶け出させるというだけでなく、加工食品に多く含まれるリン酸はマグネシウムの相対濃度を低下させることで粗暴な行動を引き出す。
 リン酸摂取を禁じる食事療法に従うことで、粗暴な非行少年マーカスを立ち直らせた西ドイツの両親の話をシャウスは紹介している。
「学校はついに彼(マーカス)を矯正するために警察にたのむことを決めたのですが、そのとき、私たちは食事でよくなると聞きました。
私たちは最初、非常に疑いましたが、この矯正食にしたらすぐによくなり始めたのですが、それは何年もの間みられなかったことでした。」
 このマーカスの両親の食事の経験から西ドイツ保健省は、反社会的行動におけるリン酸の効果についての、科学的研究を命じた。
その結果、研究者たちは、・・反社会的行動歴のある子どもたちが、リン酸に対し、反応することを見いだした。
彼らは、食事におけるマグネシウム摂取が不十分で、コーラ類ソーダ水を大量に摂取している子どもたちであった。

[亜鉛に対する銅過剰 亜鉛摂取で銅との比率を正常化してよくなった子]
 ミネラルは過剰も不足も問題であり、また諸ミネラルのバランスも大切である。
銅過剰は、攻撃過剰と多動を起こすことが知られている。
この粗暴な行動を起こす銅過剰に対して抑制する作用を亜鉛がもっている。
 1979年に栄養学者シャウスは、ジョンという9歳の殺人未遂の男子を担当した。
精神科医が投与するリタリンなどの薬物の投与量をふやしても彼の暴力をやめさせることはできなかった。
検査してみると人間の血液の銅対亜鉛の比率は1対8~12の範囲であるが、この少年の比率は、1対1.5で銅の比率が異常に高かった。
シャウスの研究所の医師が硫酸亜鉛150・を投与した。
一ヶ月後に銅と亜鉛の比率が正常比になったので亜鉛療法をやめた。
暴力行為をしなくなり、学校からも悪い行いはしないと報告があった。
ジョンは、1983年に暴力行動歴をもつ子どもたちに、亜鉛療法が効果があることを示すためにテレビ番組にゲストとして出演もしたという。
 このようにシャウスは 亜鉛に対して銅が過剰のために暴力的である子に、亜鉛とビタミンB6を投与することで問題行動が治まることをいくつかの例をあげて説明している。
ビタミンB6が必要なのは亜鉛が細胞膜を通過するのを助け、代謝作用に必要だからだとシャウスは言う。
 シャウスは、水道水の問題が銅過剰の背景にあることをつきとめているが、日本では家庭の蛇口のところでの水道水の成分の調査はきいたことがない。

[鉛]
 鉛が脳に悪いことは常識である。
大沢博によると、頭痛、興奮、落ちつけない、心の動揺、怒りやすい、うつで、記憶と集中力もそこなわれ、不眠をもひきおこす。
正常児の鉛の排泄が尿1・あたり77μ・だったのに注意欠陥・多動性の症状の子どもは146μ・だったという報告もある。
児童に対する鉛濃度の影響は、大人に対する通常の毒性水準よりも低いということを研究者は発見しているので子どもにはより注意が必要ということである。
 アメリカの連邦環境衛生科学研究所は1976年に、低濃度の鉛汚染の影響を検査するため、フィラデルフィアの児童たちを調査した。
最低の鉛濃度の児童たちの平均IQは97、最高の鉛濃度の児童たちのそれは80であった。
高い鉛濃度の男の子たちは、単純な算数計算と視角-運動協応で欠陥があったし、高い鉛濃度の女の子たちは、記憶、抽象、視覚的探索の点が低かった。
 鉛の汚染源として考えられるのは、車の排気ガス、缶入りの飲食物、鉛を含む塗料、鉛管の水道水などである。
また必須ミネラル不足はこのような有毒金属を排泄する能力を低めてしまう。

[アルミニウム]
 アルミニウムは安全であるとして食器などに広く使われてきた。
しかし、研究者たちはアルミニウムが害になるのではないかとつよく疑ってきた。
「アルミニウムが世界中で使われだしてからわずか15年後の1921年に、アルミニウムが記憶障害に関係していると報告された。
以後、さまざまの研究報告がなされているが、いずれも脳の神経組織にかかわるものであった。」と桜井弘 は述べている。
 青少年の問題行動との関連も疑われてきた。
大沢博は、アメリカのレッサーらが、非行少年は平均より高い毛髪アルミニウム濃度であることを発見し、アルミ調理器具と缶入りの炭酸飲料、ビールを疑ってることを紹介し、彼自身も「少年院の少年と無非行少年の毛髪分析の結果を比較し、非行少年群の方がアルミニウム濃度が高かった」と述べ、缶入り飲料と着色料を疑っている。
 アルミニウムの食器などを使ってケーキなどを食べると体の中にアルミニウムが吸収されやすいことがわかってきた。
それはケーキなどの香りに使われているマルトールという化合物が、アルミニウムを細胞の中にはいりこみやすくさせるからである。
「最近、このマルトールとアルミニウムの錯体をネズミにあたえると、脳内のアルミニウム濃度が高くなることが見いだされている。
このように日常とっている食物成分とアルミニウムの結合体がからだにとりこまれることも、少しずつ明らかにされてきている。」
 アルミニウムは食器だけではない。
1986年からノルウェー、英国、フランス、カナダを中心に疫学的調査がおこなわれ、水道水中のアルミニウム濃度が1リットルあたり0.11・以上の地域は、0.11・以下の地域にくらべて、痴呆発症率が1.5倍高いことがわかった。
水道水も問題だったのである。
日本では水道局が蛇口で調査したことを聞いたことがない。大丈夫なのだろうか。

第五節 オメガ3脂肪酸とビタミンB類の投与でよくなった非行少年たち

 シャウスの研究と実践は、非行少年や「注意欠陥・多動性」の症状の子どもたちをよくする上でオメガ3脂肪酸が必要であることを証明している。
必須脂肪酸がプロスタグランディンE1へ転換するにあたってビタミンB3、B6が不可欠であることはHACSGの研究の紹介のところで述べた。
 シャウスは、行為障害・「注意欠陥・多動性」の少年に多くのテストを実施した。
その中で、ビタミンB6が血中に非常に欠乏している12歳の少年がいた。
二週間、ビタミンB6を投与したが、血中のビタミンB6欠乏は変わらなかった。
 ちょうどその頃、シャウスは研究会で霊長類学者ドナルド・ルディンの「脳および中枢神経系の機能と退行性の身体的障害における、必須脂肪酸について」の論文を手にする。
そこには、「オメガ3脂肪酸によって、ビタミンB6を含む、あるビタミンBの吸収を改善できた」と書いてあった。
オメガ3脂肪酸は、魚の脂、亜麻仁油などに含まれる。
 そこで食用亜麻仁油を一日スプーン1~2杯とらせるように問題の少年の母親に告げた。
するとそれから二週目の終わりには、家の雑用や母親の手伝いをし始め、学校での行為も良くなっていった。
 以後、シャウスは、オメガ3脂肪酸を加えるまでよくならなかった子どもたちがオメガ3脂肪酸を加えることでよくなったケースを数多く体験してゆく。
 オメガ3型の脂肪酸は、亜麻仁油だけではなく青魚もそうであり、肉食より青魚食でも効果はでるはずである。
バターやマーガリン、植物の油の多くがオメガ6脂肪酸であり、現在の食生活の脂肪の摂取はオメガ6脂肪酸に偏った食事である。
したがってビタミンB類の血中への吸収が悪く、その結果、プロスタグランディンE1の形成が阻害されるなど、行動がコントロールできないことになる。
 シャウスは、オメガ3型の脂肪酸の不足は、非行などの行動上の問題だけではなく、情緒障害やうつをもたらしているケースも発見している。
「この少年とちがって、他のクライエントのあるものは情緒障害、うつであった。
これはオメガ3脂肪酸の欠如がいろいろな行動上、情緒上の問題を起こしうることを示唆している」
 ビタミンB3、B6の吸収のためにオメガ3脂肪酸の必要性があったことをシャウスの経験は示している。
 現代人はオメガ6型に偏りがちであり、健康のためにオメガ3型の脂質の摂取が大切だと言われているが、精神と行動上の問題においてもオメガ3タイプの脂質が重要であることをシャウスは臨床的に証明している。

第二章 生活リズムの乱れがなぜ精神と行動に影響を及ぼすか

第一節 体内時計と神経伝達物質

[体内時計の発見と1日のリズム]

 一日の時間にそったリズムをもって生きることが大切なことは、古代インドのアーユルヴェーダ医学に書かれているし、昔から常識として言われてきたことである。
しかし、生物がもつ固有のリズムに関する科学的研究が発達してきたのは、最近になってからである。
アメリカの学者フランツ・ハルバーグは1960年に、個々の生物がもつ一日のリズムをサーカディアン・リズム(概日リズム)と名づけた。
そして自分の体温、尿、血液、脈拍を調べて、人間の生体現象にもサーカディアン・リズムがあることを発見した。
その後、1972年に哺乳動物は視床下部に概日リズムを示す生物時計をもっていることが証明された。
のちに西ドイツの学者が人間は約25時間の概日リズムを持っていることを証明した。
さらに最近では生物時計の遺伝子も発見された。
 人間は、その「体内時計」によって体温、ホルモン分泌、睡眠覚醒のリズムを作り上げて生きている。
体温は午後2時から6時にかけてが一番高く、午前2時から4時が最低になる。
血圧も昼間が高く、夕方から深夜にかけてが低くなる。
脈拍、肺活量、体力、気力、脳の活動も午後にピークを迎える。
反対に血液中のリンパ球の数は、午後11時から午前4時にかけて最高潮となる。
もっとも体温が高い時間は活動に適しており、体温が低い時間は活動に不適当で休養のための時間である。

[神経伝達物質の分泌も一日のリズムを持つ]

 無髄神経のA系列、B系列の神経伝達物質も一日のリズムをもって動いている。
A系列の神経伝達物質であるドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリンは、脳を覚醒し、活動させる役割をもっていた。
強力に活動するとカテコールアミンとよばれるそれらの神経伝達物質が減ってゆく。
長時間集中して何か思考しつづけたりすると、人は集中力を欠き、頭がぼーっとした状態になる。
そこでB系列のセロトニン、メラトニンが、脳の活動を抑制し、睡眠に導く。
睡眠中にカテコールアミン類の神経伝達物質は合成され、十分に蓄えられ、目覚めた時に十分な活動ができるように準備される。
したがって、A系列の神経が活動し、強い集中力ややる気を出すためには十分な睡眠が必要なのである。
そのためにB系列の神経すなわち睡眠中枢も十分に活動しなければならない。

 [メラトニンというホルモンの多寡が全身に時刻情報を伝える]

 このように帰宅後に先に眠ってから深夜勉強するとか、アルバイトや夜遊びで、夜、遅くまでおきたり、寝不足になっているということは、人間の睡眠・覚醒リズムとずれた生命活動をおこなっていくことである。
そのことは自分の頭脳と体の能力を低下させ、また疲労の回復力を弱めてゆくだけでなく、ホルモン分泌のバランスを崩し、感情面、情緒面での不安定さを生み、かつ、様々な心身の問題を引き起こす要因でもある。
そのキーとなる役割を果たすのがメラトニンというホルモンである。
   脳の中央にある松果体は体内時計が刻んだ神経情報をメラトニンに転換して血液中に分泌して全身にメッセージを送る。
自律神経系、内分泌系、代謝系、免疫系の各体内のシステムは、血液を流れてくるメラトニンの量によって、それぞれがリズムをもって作動するようにできている。
したがってメラトニンが夜に多く昼に少ないというリズムで体内をめぐることが、体内の諸システムが十全に機能する上で決定的に重要だということになる。
ところが不規則な生活ではメラトニンの分泌量が減る。

[規則正しい生活で昼夜がはっきりしている子はメラトニンの分泌量が多く、体内の諸システムが正しく作動する]

 メラトニンの分泌は次のように行われる。
朝、目から入った光の刺激が、眼球のすぐうしろにある体内時計の神経細胞に伝わる。
そしてその体内時計は「メラトニンの合成をやめよ」という指令をメラトニンを分泌する器官である松果体に伝える。
そして12時間後に「メラトニンの合成を開始せよ」という指令が発せられるように体内時計のタイマーがセットされる。
 この脳内ホルモンのメラトニンの分泌量は、早寝か遅寝かによって大きく異なっている。
次のグラフは、成長ホルモンの分泌量を夜間睡眠をとった場合ととらない場合の成長ホルモンの分泌量を示したものである。

 この資料は成長ホルモンの分泌量であるが、メラトニンの分泌についてもあてはまる。
ただし、メラトニンは夕方頃からゆっくりと上昇し、午前2時~3時頃に分泌量はピークに達し、夜明けが近づくとメラトニンの分泌量は急降下し、朝から日中はずっと低レベルを維持する。

[朝、外の強い光を浴びることがメラトニンの分泌量の多寡をはっきりさせ、体の諸システムに時刻情報を正確に伝えることを助ける]

 メラトニンは、朝、明るい光を浴びると夜間のメラトニンの分泌量が多くなることが実験で確かめられている。
昼間、明るい光の中で活動し、真っ暗闇の中で眠る方がメラトニンは大量に分泌され、昼夜の明暗がはっきりしない生活、遅寝遅起ではメラトニンの分泌は少ない。
メラトニンが少なければ、体は時刻情報を正確につかむことができず、諸システムは正しく作動しないことになる。
最初に述べた体温リズム、血圧リズム、そして脈拍、肺活量リズム、したがって体力、気力、脳の活動に様々な問題を引き起こすことになる。

第二節 睡眠覚醒リズム、食生活リズムの乱れが引き起こす諸問題

[睡眠不足や不規則な生活は、神経伝達物質の分泌バランスを崩し、落ちつきの無さと注意欠陥を生ずる]

 このように睡眠不足や不規則な生活は、トリプトファン→セロトニン→メラトニンというB神経系の活性を弱め、メラトニンの分泌量が少なくなる。
このことは同時にセロトニンの分泌量も減るということである。
セロトニンの分泌量が少なければ、気分はうつになり、暗くなる。そして衝動も抑制しにくくなる。

 逆にドーパミン→ノルアドレナリン→アドレナリンのA神経系は人間を覚醒させ、行動させ、活動的にさせるものであった。
「朝はノルアドレナリンの分泌開始によって目覚め、昼はノルアドレナリンの分泌によって活動し、夜はノルアドレナリンの分泌が減退して眠る」(大木幸介)
ところが、睡眠不足や不規則な生活は、このホルモン分泌リズムについても撹乱させることになる。
 したがって食生活の偏りやストレスと同じように睡眠不足や睡眠・睡眠覚醒リズムの乱れは、脳内ホルモンの分泌バランス、すなわちセロトニン・ノルアドレナリンの分泌バランスを崩し、無気力や集中力の無さ、イライラなどを引き起こす。

[食事と一日のリズム]
 実は摂食行動も体内時計にもとづいている。
大阪大学の時間薬理学の研究をしている中川八郎は、生物時計にそった食生活をするべきだとして摂食行動も体内時計にもとづくことを証明した実験を紹介している。
 「ラットの1時間あたりの摂食量の変化を追跡してみると、午後9時ごろ、午前1時ごろ、午前6時ごろと、計三回摂食量が急増する時間帯があるのがわかる。・・・
この摂食行動は生物時計によってコントロールされ、生物時計の時刻情報が、神経経路を通じて摂食・飽食中枢に作用し、両者のブドウ糖にたいする受容体の感度にまで影響を与えて、日周リズムを形成している。」
  このことは人間の消化、吸収、代謝についても同じである。
次のグラフは血糖とインスリンの一日の分泌量のリズムである。
血糖とインスリンの一日のリズム

 体の中の消化や代謝のシステムが一日のリズムをもって作動していることは、腹が空いたら食べるというのではなく、腹八分にして次の毎日、同じ時間帯に食事をした方が栄養吸収がいいということになる。
 したがって睡眠覚醒のリズムだけでなく、食事時間もリズムをもった生活をすることが望ましい。
落ちつきなく、注意力の欠ける子どもたちにとっても、プロスタグランディンE1、セロトニン、あるいはフェノール・スルホン酸トランスフェーラゼやモノアミン分解酵素などが、自らの体の中に摂取した栄養素から形成され、フルに機能して、その症状を改善していくことが大事であるから、自らの生物時計にそった食事の摂取と地球の自転にそった睡眠覚醒の生活は不可欠である。

[不規則な生活は性的成熟を早める]

 メラトニンの分泌量は、5、6歳でピークに達し、10代の初めまでずっと高いままである。
しかし「思春期の直前になるとメラトニンのレベルが下がり、第二次性徴を迎える」(服部淳彦)
そしてそのままメラトニンの分泌量は年齢とともに低下しつづけてゆく。
この事実からメラトニンには性腺を抑制する働きがあり、メラトニンのレベルが下がると抑制が解かれて性的な成熟が促されるのではないかと考えられている。
もしこの解釈が正しいとするならば、大人の生活に巻き込んで子どもを遅くまで寝させないでいるとメラトニンの分泌レベルが下がるから性的成熟が早くなってしまうということになる。

第三節 体内時計を治す方法

[体内時計のリセットの方法]
 体内時計のリセットにとって大切なことは、まず第一に朝起きて外にでて光を浴びることである。
そのことがが夜間のメラニンの分泌量をふやす。
睡眠覚醒リズム障害の治療現場では2000ルクス~3000ルクス程度の明るさの人口の光を朝2時間ほど浴びさせているそうである。
第二に、就寝時には部屋を真っ暗にすることが大事である。
第三に、メラトニンをふやす食べ物を食べる。 これはセロトニンをふやす食べ物のところでふれたトリプトファンやビタミンB 6などを含む食品である。
第四に、腹八分目にして食べ過ぎないことがメラトニン分泌の低下を防ぐ。
第五に、メラトニンを減らす飲食物をさける。
夕方から就寝時にはメラトニン分泌を妨げるカフェインの飲食をしない。
コーヒー、紅茶、緑茶、コーラ、ドリンク剤、チョコレートなどである。
タバコもメラトニン分泌を減らす。就寝に近くなったらノンカフェインすなわちホットミルクやハーブティーなどが望ましい。

第三章 ストレスが、なぜ精神と行動に影響を及ぼすのか。

第一節 ストレスとは何か

[ストレスとは何か]

ストレスとは何なのか。
ストレスとよばれる現象を学問的に明らかにして、生体の防御反応(ストレス)反応としてホルモンの分泌に異常をおこすことを明かにしたのは1950年代のハンス・セリエである。
通常に使われている心理的ストレスだけでなく生理的ストレスによっても共通の体内の反応が引き起こされることに注目した。
 そもそも身体のストレス反応は、本来、原始時代の人間が危険に直面した時、全エネルギーを逃亡か闘争にもちいるためにあった。
したがって消化器官にある血液も脳と筋肉の方に集中させ、精神的には、攻撃のための怒りと逃げるための不安、恐怖の感情を引き起こし、怪我した時の出血を早く止めるという、いわば一時的な緊急事態に対応した体の仕組みをつくりだすものである。
危機が去ると精神的に安堵するとともに体も平時の体制にもどる。
 そもそも肉体的ストレスは体に耐性ができてくるが、心理的ストレスは繰り返すごとに脳がより大きなストレスとして受けとめるもののようである。
体に電撃ストレスを与えたネズミと心理的ストレスを与えたネズミの脳からのノルアドレナリンの分泌量を比較した実験がある。
電撃ストレスを体に与えられたネズミの方は五日もしたら慣れてきて脳のノルアドレナリンが少なくなっていった。
しかし、心理的ストレスを与えられたネズミは五日目の方がノルアドレナリンの分泌量が増していたという。
 このように肉体的ストレスは心理的ストレスよりも短時間の場合が多く、それを乗り越えることでストレス耐性が増してゆく。
体を過保護にしすぎるのが問題なのはここから来ている。
しかし、精神的ストレスは、長期にわたることが多く、また厭な出来事は思い出すだけで、あるいはこれからぶつかるであろう嫌な場面を想像するだけでストレスを感じるので、直接ストレスにさらされていない時でも記憶と想像の中でストレス源にさられていることになる。
このような心理的ストレスは、心と体に様々な問題をひきおこすことになる。
 次にストレスが行動上の問題を引き起こすメカニズムを考えてみよう。

[ストレスが問題行動を引き起こす理由。ストレス反応によりホメオタシス(恒常性)維持のため余力が少なくなる]

 ほとんどの病気はストレスのもとに置かれた時に悪化する。
食物などから摂取した化学物質への敏感性も同じくストレスのもとで悪化する。
その理由はホメオタシス(恒常性)維持の能力をストレス反応のために使いきるからである。
 ホメオタシスとはわれわれが毎日飲んだり食べたりするものの化学組成は、日によってかなり変動するにもかかわらず、体の物質組成は常にほぼ一定に保たれていることである。
身体にストレスがかかると体のホメオタシス維持のための装置や材料がストレス反応のために優先的に使われるので、ストレス以外のホメオタシスを乱す要素に対する対応がとれなくなるということである。
たとえばストレスに反応するためには神経伝達物質を普段以上に消費し、その分解のためのモノアミン酸化酵素も普段以上に必要になる。
そのため同じタンパク質やミネラルの素材を利用する類似の酵素はその材料不足をひきおこすことになり、その役割を十分に果たせなくなる。
 ストレスのかかっていない状態の時はフェノールを分解することができ食品添加物に対してまったく反応しない子どももストレス下では、食品添加物に反応してしまうということになるなどの症状が現れることになる。
 カナダのドリス・J.ラップ医師は次のように言っている。
「花粉のカウントが100に達するまで普段は喘息でも花粉症でもない子どもが、ストレスにさらされているならば、カウント25で花粉症や喘息の症状を示す。・・・
子どもの生活に深刻なストレスが加われば、子どもは様々な問題に対して普段以上の敏感性をもつようになる。」
 したがって普段は化学物質の影響で「注意欠陥・多動性」の症状を示さない子も、ストレスにさらされている場合、食べ物にも反応して落ち着きと集中力をなくし、「注意欠陥・多動性」の症状を示すことになる。
 以上は、ストレス反応と体全体のホメオタシス維持の機能からの説明である。
次にストレス反応それ自体が行動上の問題を引き起こす生理的メカニズムを説明しよう。

第二節 ストレスが攻撃性を引き起こすしくみ  ノルアドレナリンの過剰分泌 

[ノルアドレナリンの過剰分泌と攻撃性]
 ストレス反応の一つはノルアドレナリンを放出させ、怒りと恐怖を引き起こし、身体を戦いと逃亡のための緊急体制に変えることであった。
『警告ホルモン』と呼ばれるこのノルアドレナリン、アドレナリンの分泌が高いレベルで体内にあると「カッとなって人にすぐ手をあげてしまう」人になる。
 同時にストレスはノルアドレナリンの作用を抑制するセロトニンの分泌量を減少させる。
全米アルコール乱用・アルコール中毒研究所の研究によると、
「小麦や玄米などの穀物に含まれるトリプトファンをセロトニンに変換するトリプトファン・ヒドロキシラーゼというタンパク質の生産に指示をだす遺伝子がある。
その遺伝子に欠陥をもつ人がおり、普通に生活していたらセロトニンはつくられ、問題はないが、ストレスの多い環境、またはアルコールの飲み過ぎという要因が重なるとセロトニンの量が減っていって、怒りのホルモンであるノルアドレナリンの働きを抑制できなくなる」という。
 だからストレスは万人にノルアドレナリンの分泌を引き起こし、攻撃性をもたらし、またある人々にはノルアドレナリンを抑制する働きのセロトニンの分泌を妨げるから一層攻撃性を高めるのである。

[ストレスが、落ちつきと注意力を奪う免疫システムのルート]
 ストレスにさらされると免疫力が低下し、病気になりやすいことはよく知られている。
また免疫系でつくられた物質が直接に神経系に作用し、症状を引き起こしていることも明らかとなってきた。
ストレスの専門家坂井四朗は「脳内の別種の作用物質であるプロスタグラディン類にその情報を伝えるのかもしれない。」と指摘している。
この指摘は、HACSGのいう免疫・行動・渇きなどをコントロールするプロタグランディンE1にかかわっていることを予想させる。
いずれにせよ、強いストレスは免疫システムを通じても神経系を撹乱し、行動に影響するのである。

[アレルギー反応の悪化から行動に影響をおよぼすルート]
 また強いストレス反応は免疫系を撹乱することでアレルギー反応も悪化させる。
普段はアレルギー反応を起こさない場合にもストレス下ではアレルギー反応をひきおこす。
もともとアレルギーをもっている子はもっと症状を悪化させることになる。
すでに述べたようにこのアレルギー反応すなわち免疫過剰反応は、神経伝達物質の量を減らし、受容体の数を増やし、ノイズまでキャッチして、神経伝達が混乱し、注意欠陥・多動性の症状をひきおこす。

[ストレスが助長する下痢や便秘による腸内でのフェノールの生成]
ストレスが、便秘や下痢など腸の問題、そして胃の問題を引き起こすこともよく知られている。
便秘や下痢で増殖した腸内の有害菌の作るフェノール類が「注意欠陥・多動性障害」をもたらす要素であることもすでに述べた。

[ストレス反応がミネラルのアンバランスをひきおこす]
 ストレスは、カルシウム、マグネシウムなどの必須ミネラルを対外に排出してしまうことでミネラル・バランスを崩してしまう。
そのことは精神状態を不安定にするだけでなく、体内に入った有毒な化学物質を分解、解毒する酵素の働きを低下させますから体内に有毒ミネラルが蓄積しやすくなることを意味する。
 次の図は、国立健康・栄養研究所の西牟田守の身体的ストレス(寒さ)と精神的ストレスをかけた場合の尿の中でカルシウムとマグネシウムの排泄量の研究である。


 この実験が示していることは、精神的ストレスであれ、身体的ストレスであれ「カルシウム、マグネウシム、リンなどの尿中排出量が増加」することである。
そしてこのような必須ミネラルの排泄だけでなく、「カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄などのミネラル分の腸管でみかけの吸収が低下」したという。
 したがって、ストレス下にある時は、平常と同じ食事でミネラルを摂取していても、ミネラルの排出と吸収困難のために、ミネラルバランスを崩し、有害ミネラルが蓄積しやす体質となり、また脳の活動に必要な諸ミネラルが不足するという事態に陥るわけである。

[ストレスが活性酸素を生じ、脳組織を傷つける危険性 飲食物の重要性]

 ストレス反応は、本来、原始時代の人間が危険に直面した時に全エネルギーを逃亡か闘争かにもちいるために消化器官にある血液も脳と筋肉の方に集中させる緊急事態に対応したものだった。
消化器官から脳と筋肉にまわった血液が、もう一度消化器官に血液が再還流する時に活性酸素が発生し、脳や心臓などに問題を引き起こす。
モノアミン酸化酵素がストレス反応で過剰に分泌されたノルアドレナリンを分解するときに活性酸素ができるためである。
 常時ストレスにさらされてバランスを崩して免疫力を弱めている子どもがさらに一時的に強いストレスを受け、血が頭に昇り、再還流して活性酸素を発生させたならば、その活性酸素が行動をつかさどる神経を構成する分子を破壊してゆく可能性もある。
この場合、深刻な問題を引き起こしうる。
アメリカ在住のインド人医師でフリーラジカル(活性酸素などのこと)の研究者ハリ・シャルマは
「脳はとくにフリーラジカルによる損傷を受けやすい。・・・
パーキンソン病、自閉症、精神分裂症にも関与している」と述べている。
このような神経を構成する分子の破壊による精神と行動の異常は、ここでテーマとする食事などの生活レベルで治癒できる範囲を越えており、そのような場合は精神科医に見てもらい医学的な治療を受けるしかない。
そうならないようにストレス下におかれている子どもには、心の支えとなる努力と同時に食事と生活リズムのアドバイスが必要となる。
 ある精神科医によると100人に1人の率で精神分裂病にかかっているそうである。
もし、精神分裂病の発症の原因を活性酸素にあると考えた場合、強いストレスによる活性酸素の発生による脳へのダメージを防ぐためには、体内にある活性酸素の害を防ぐ酵素SOD、カタラーゼ、グルタチオン・パーオキダーゼを活性化する必須ミネラル類が不足しないようにする必要がある。

 そしてとりわけ血中にフリーラジカルの一種の過酸化脂質を生み出すチップス類、そして加工食品、肉類を避ける。
そしてSODなどと同じく活性酸素の害を防ぐ役割を果たすでビタミンA、C、Eなどを含む緑黄色野菜や果物を中心にとる食事体系とすることが必要である。
それらは強いストレスに陥ったとき、脳をフリーラジカルから守り、精神分裂病などに陥ることを防ぐことになるからである。
この面でも何を飲食するかは重要である。

第四章 運動は精神と行動にどう関連しているか。

第一節 精神にとっての日々の適度な筋肉運動の必要性


 健康維持のための要素として食事、休息・睡眠、ストレス、運動などの大切さが言われている。
精神の健康にとっても同じことがいえる。
最初の三つについては詳しく論じたので、健康な精神のために運動の必要性について簡単に述べておこう。
 人間は動く物すなわち「動物」である。
動くためには収縮する筋肉と、それをコントロールする神経が必要である。
筋肉を動かすことは同時に神経を動かすことである。
筋肉の運動は、神経・精神に作用するのである。
専門家の大木幸介によると、筋肉からの感覚神経は、脳幹を刺激して脳幹から全脳へ分布するAB神経系を刺激して活動させることになるという。
A神経系はノルアドレナリンやアドレナリンを分泌し、B神経系はセロトニンやメラトニンを分泌する。
ABの両神経系の働きが活発になるということは、活力あり、かつ抑制力のある人格に形成されるということである。
 どのような運動がいいのかについて専門家の大木幸介は、次のようなものをあげている。
・大腿筋の運動、すなわち 足を動かすこと、歩くこと、駆けること、
・咬筋の運動、すなわち硬いものを、強く、よく咬むこと。
・背筋を伸ばして座ること、これは大腿筋に緊張をもたらす運動であるとのことである。
・いやいやでなく、心地よく運動すること。
このように運動とは、正式のスポーツでもよいが、軽い体操とか、軽い散歩とか、買い物のお手伝いまで含んで運動と考える。

第二節 「ストレスの発散」としての運動

 ノルアドレナリンの分泌は、人間を覚醒させ、活動的にさせる。
その急激な分泌は危険に際して逃亡や闘争の必要のために血中にエネルギーの材料であるブドウ糖の濃度を上昇させる。
そして血液を脳と筋肉に集中させる。
したがって、ストレスで血中濃度の高まったブドウ糖を筋肉の運動で燃やすということはノルアドレナリンの本来の役割を果たさせることであり自然の道理にかなっている。
したがって趣味のスポーツ、または何か身体を動かすことはストレスでノルアドレナリン分泌過剰となってしまった人間にとって治癒的に働く可能性があると考える。
子どもに手伝いなども含めて身体をこまめに動かさせ筋肉運動をしてエネルギーを燃やさせる習慣を身につけさせることが必要である。

H.P. of socialist earth government (社会主義地球政府のH.P.)

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